高炉で溶銑1トンを生産するのに、約500キログラムのコークスが消費されている。先にも述べたように、コークスは化学反応を起こさせるためだけではなく、高炉内のガスの流通性をよくするためにも、高炉の製鉄法で欠かせない役割を果している。良質のコークスは高炉—転炉法に不可欠なものであり、コークス炉は一貫製鉄所においては、設備の重要な部分を占めている。

日本の一貫製鉄所の建設は、1970年代に完了した。日本のコークス炉の大部分は、その予想寿命と言われている約40年にわたる操業ののち、21世紀の初頭に、その寿命を終えることになるだろう。北米や欧州の製鉄所においても事情は同様である。

高炉の操業には、コークスが不可欠であるために、コークス炉の寿命を伸ばしたり、コークスの消費量を減らす努力がなされてきている。その結果、コークス炉の耐火レンガ修理技術、高炉への微粉炭吹き込み技術、1978年から1986年までの政府資金援助による成形コークスプロセス開発などが著しく進展した。

しかし、微粉炭吹き込みや成形コークスプロセス技術は、高炉で消費されるすべてのコークスを置き換えられるものではないので、コークス炉に代わる新たなコークス生産能力がふたたびすぐに必要になるだろう。現在のコークス製造プロセスには、その生産能力を増すための建設を躊躇させるようないくつかの障害、すなわち煤塵や有害ガスの排出、低生産性、高設備費、高温操業による高エネルギー消費、がある。

日本鉄鋼連盟は政府の支援により基礎研究を2年間行ったのち、1996年に革新的なコークス製造プロセスの開発に着手した。このプロジェクトは、SCOPE21と呼ばれている。これは3年間の要素技術の開発と、引き続き行われる3年間のパイロットプラントテストから成り立っている。

図に示すように、この革新的なコークス製造プロセスの構想は、石炭の事前処理、コークス化、それに続く加熱と冷却、という3段階のサブプロセスで構成されている。

(1)573〜673K(300〜400℃)への石炭粒子の急熱前処理プロセスで石炭のコークス化特性を改善する。

(2)コークス化過程で、前処理した石炭を凝集し、約1,000K(727℃)まで加熱する。この温度は、1,273K(1,000℃)まで昇温する従来のコークス炉よりかなり低くしてある。
この凝集した石炭塊を均一に加熱することにより、低温でのコークス化が可能になる。

(3)加熱と引き続く冷却処理により、コークスは高炉で使用するのに必要な品質となる。

このプロジェクトは、従来のコークス炉と比べ、非粘結炭の使用比率を20%から50%に高めること、煤塵や有毒ガスの排出を著しく減らし、NOxを30%削減すること、操業を完全に無人化し、エネルギーを20%節減し、そして生産性を300%向上することを目的としている。