地球環境問題のうち、温暖化対策としての、二酸化炭素(CO2)排出の抑制は、鉄鋼業が取り組まなければならない重要な課題のひとつである。

地球全体の平均気温は、図の左のように1970年代後半から上昇に転じ、1980年代に入ってからこの傾向はさらに顕著になったとみられている。この原因は、CO2をはじめとする温室効果ガスの大気中濃度が増加したためとされている。現在大気中のCO2濃度は約340ppmであり、年間の増加量は1.5ppmである。このようにCO2濃度が増加した大きな原因は、1950年以降は、炭素を含む化石系燃料の燃焼によるとされている。国連と世界気象機関の共同調査によれば、今後もし何の対策も講じられずに、人間活動による温室効果ガスの放出が続くと仮定した場合、22世紀の初めには、平均気温は現在よりも3度上昇するという予測がある。

現在われわれが利用しているエネルギーは、かなりの部分を化石エネルギーに頼っている。したがって、CO2放出量抑制のためには、別のエネルギー源を求めるか、エネルギーを効率よく使用する必要がある。新エネルギー源への転換やCO2固定化技術の実用化は、現在まだ開発中のものが多く、実用化し普及していくには長い時間が必要である。そこで、今すべての人が心がけなければならないことは、エネルギーの有効利用すなわち省エネルギーであり、鉄鋼業もその例外ではない。

図のように、日本鉄鋼業は1973年から15年間で20%の省エネルギーを達成した。この間、日本鉄鋼業界は、環境対策に1兆4千億円、省エネルギー対策に1兆3千億円の設備投資を行った。