現在、地球環境問題としてとり上げられている主な項目には、オゾン層の破壊、温暖化、酸性雨、熱帯林の減少、砂漠化などがある。これらの原因としては、20世紀後半の産業・経済活動の活発化や、人口の増加などが根源にあるが、具体的な因果関係はまだ不明の点も多い。地球環境問題の中で鉄鋼業に関連するのは、酸性雨と温暖化である。

酸性雨は硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の大気中への放出が原因といわれており、これらの放出抑制が重要である。

硫黄酸化物のうち二酸化硫黄(SO2)は、硫黄分を含む石油、石炭が燃焼することにより生じ、酸性雨のほか、高濃度で呼吸器に影響を及ぼす原因物質となる。日本では、1973年に一日の平均値を0.04ppm以下とする環境基準が定められた。製鉄所における硫黄酸化物発生源には、焼結機、コークス炉、加熱炉などがあり、これらに対して焼結機排ガスとコークス炉ガスの硫黄酸化物を取り除く、排ガス脱硫、石炭や燃料の低硫黄化、などの対策がとられた。この結果、図の左に見るように、製鉄所の硫黄酸化物排出量は大幅に低減している。日本全体でも、1986年以降、二酸化硫黄濃度は年平均値で0.01ppmのレベルで推移している。

窒素酸化物は、主として化石燃料を燃やしたときの高温によって、空気中および燃料中の窒素が酸化して発生する。このうち二酸化窒素(NO2)は、高濃度で呼吸器に好ましくない影響を及ぼすほか、酸性雨や光化学大気汚染の原因物質となる。このため日本では、1978年に一日の平均値を0.06ppm以下とする環境基準が定められた。製鉄所における窒素酸化物の主な発生源は、硫黄酸化物と同様に焼結機、コークス炉、加熱炉であり、窒素酸化物が発生しにくいバーナーの開発や燃焼条件の改善、排ガスから窒素酸化物を取り除く脱硝設備の開発・設置などの対策を実施してきた。この結果、図の右に見るように製鉄所の窒素酸化物排出量は低減している。日本全体の二酸化窒素濃度の年平均値は、一般環境大気測定局で約0.03ppm、自動車排ガス測定局で約0.04ppmで推移している。

1994年度から製鉄所の硫黄酸化物、窒素酸化物排出量の日本鉄鋼連盟による集計が中止された。最近は各鉄鋼会社が環境報告書などで自製鉄所の排出量を毎年公開している。それらによると、SOx、NOxとも1994〜2000年は1990〜1993年のレベルで推移している。