鉄鋼の製錬工程において、コークスは、高炉で鉄鉱石を還元するときの還元剤としての炭素の供給源および、装入物を加熱・溶解するための熱源としての役目を果している。コークスは石炭をコークス炉で蒸し焼きにしてつくる。石炭は、石炭化度によって、図に示す4種類に分けられ、無煙炭が最も石炭化度が高い。代表的な石炭は瀝青炭と褐炭であり、なかでも瀝青炭は、世界の埋蔵量が約7兆トン、可採量が約2兆トンと最も多い。

高炉で使うコークスは、炭素を高濃度に含みかつ灰分や硫黄分が少ないことに加えて、適当な気孔率を持ち、高温でも粉化しない強度が必要である。このような条件を満足するコークスは、瀝青炭のうち、粘結性があり、灰分や硫黄分の少ない石炭からつくられる。

コークス炉では、粉砕、混合した原料炭を炭化室に装入し、1,473〜1,573K(1,200〜1,300℃)で14〜18時間、間接加熱し、蒸し焼き(乾溜)にすることによって、固定炭素約90%を含むコークスをつくる。このとき、同時にガス、タール油や、ピッチなどの副産物が得られ、これらを精製、処理することによって、燃料用ガス、純水素ガス、ベンゼン・トルエン・キシレンなどのC1化成品、ナフタリン、染料や炭素繊維などの有用な副生品が製造される。

コークス炉の寿命は約40年であり、日本では現在稼働中のコークス炉は2015年頃から順次寿命に到達し、コークスの供給量が不足することになる。これに対処して、高炉では、粘結性が低くコークス製造には不向きな石炭を羽口から装入する微粉炭吹き込みが広く実用化されている。このほか、原料炭の選択の自由度が大きく、かつ環境保全の視点からも進歩した新しい(i)コークスの製造技術や、(ii)コークスを使わない製鉄法の開発が進められている。