財団法人川鉄21世紀財団は、21世紀における創造的発展をめざす鉄鋼産業ならびに関連産業に資する技術研究への助成や調査・研究、国内外の鉄鋼産業に関連する地域の発展や国際交流に資する事業を行うことにより、産業の振興と豊かな生活文化の形成に貢献することを目的として活動しております。
さて、鉄鋼は人類にとって最も普遍的かつ基本的な工業材料・建設材料として、人びとの豊かな生活を支える役割を担い続けています。世界の粗鋼生産は現在7億トン台であり、そのうち日本は1億トン前後でおよそ14%を占めています。また、世界および日本で使用される金属の重量の約94〜95%は鉄鋼です。
このように、使用量からみても用途の多様性からみても、材料のなかで鉄鋼の重要性は揺るぎないものでありますが、近年、鉄鋼業にとって気になる現象が学界で起きています。すなわち、日本の大学の工学部では、従来存在していた冶金学科や金属工学科など鉄鋼に関連した学科名が消えて、異なる名称に変更されたり、あるいは鉄鋼に関する講義そのものが大学のカリキュラムからなくなりつつあります。また、鉄鋼関連の技術研究は文部省の科学研究費の交付対象になりにくい傾向にあると聞いています。
こうした現状に対応して、本財団では設立以来毎年、大学における鉄鋼等のプロセスおよび材料に関する基礎・応用研究に対し助成を行ってきています。さらにこのたびは、大学における先生方の鉄鋼関連の講義を支援し、学生が専門課程や大学院の進路選択に際して鉄鋼に対する関心を高めるのに役立てていただくために、『鉄鋼プロセス工学入門』と題する教材を作成し、関係機関に寄贈する運びとなりました。

『鉄鋼プロセス工学入門』は、解説書、OHPシート、ナレーションテープから成り、全体の構成は、
1章  「用途 —その限界への挑戦—」、
2章  「製・精錬および連続鋳造」、
3章  「加工・熱処理および表面処理」、
4章  「制御技術 —鉄鋼製造を支えるシステム—」、
5章  「環境・エネルギ−」、そして、
6章  「今後の発展に向けて」となっています。

本教材をご利用いただくに際しての留意点は以下のとおりです。

(1)本教材は教科書として作成したものではなく、鉄鋼製造にかかわるすべての学問領域を網羅してはおりません。その意味では表題のとおり入門的、初歩的ではありますが、現実の鉄鋼生産のプロセスについては最新の技術、設備の情報を取り入れるよう努めました。学問的にさらに詳しい内容については、それぞれの分野の専門書をご利用ください。

(2)解説書、OHPシート、ナレーションテープは各章、節、項の番号記号でそれぞれ符合するようになっています。ただし、解説書・ナレーションテープの表題とOHPシートの表題とは必ずしも一致していません。これはOHPシートには解説書・ナレーションテープで述べた内容のすべてを図示する訳にはいかないためです。

(3)解説書の下段には、対応するOHPシートの縮小コピーを印刷してあります。これにより解説書とOHPシートとの対応を確認しやすくしています。

(4)ナレーションテープには解説書と同じ内容が録音されています。

(5)本教材では、解説書の内容に補足説明を加えつつOHPシートを見せる、ナレーションテープによる解説を聞かせながらOHPシートを見せる、あるいは、講義の展開にOHPシートのみを利用する、などさまざまな使い方が考えられます。

本教材の作成にあたっては、大阪大学名誉教授 森田善一郎氏ならびに東北大学教授 江見俊彦氏に監修していただき、編集面では川鉄テクノリサーチ株式会社にご協力いただきました。本教材が大学等の教育の場において幅広く活用され、鉄鋼に対する興味・関心を少しでも高められ、理解を深めることができれば幸いです。

1994年6月
財団法人 川鉄21世紀財団
------------------------------------------------------------------------------

当財団では、このたび、上記『鉄鋼プロセス工学入門』のうち、ナレーションテープを除き、解説書とOHPシートをホームページに載せて、皆様にご利用いただくことにいたしました。

これは、本教材が国内の大学の講義等で活用されて、好評を博しており、寄贈先以外の大学などの教育機関から寄贈のご要望が多数寄せられていますが、残部がわずかで、ご要望にお応えできないこと、および、インターネット上のホームページであれば、必要なときにいつでもアクセスでき、自由にご活用いただける、ためです。

上記の教材作成の趣旨に沿って、本教材を幅広くご利用いただきますことを期待しております。

2002年5月
財団法人 川鉄21世紀財団