鉄鋼業は、環境対策として水の有効利用と再処理にも取り組んできている。日本における用途別取水量を見ると、図の左のように、農業用水が1日平均1億6千万立方メートルと最も多く、ついで生活用水、工業用水がそれぞれ4千万立方メートル強となっている。工業用水の中で鉄鋼業の取水量は、紙・パルプ工業、化学工業より少なく、1日平均約380万立方メートルである。しかし、鉄鋼業で実際に使用している水の量は3千8百万立方メートルと非常に多い。使用量と取水量との差が大きいのは、製鉄所では、一度取水した水を使用後回収処理して、循環使用しているためである。

図の右は日本鉄鋼業における淡水の使用量、取水量、回収率の推移を示している。1970年代、水の使用量は大幅に増加したが、回収、再使用率を上げることにより、鉄鋼生産量の増加にもかかわらず、新規補給水量は微減傾向をたどっている。

粗鋼1トンの製造には、150立方メートルの水が必要であり、このうち約90%が冷却用である。微細なスケール、ダストなどの懸濁物質を含む冷却水やガス洗滌水は自然沈澱、凝集沈澱、ろ過処理する。圧延工程などから出る油分を含んだ水は、自然浮上、ろ過、凝集加圧浮上によって油分を取り除き、回収した油は燃料油等として再利用している。酸洗、電解清浄、めっき工程から出る酸・アルカリやFe,Cr,Znのような金属を含んだ水のうち、酸・アルカリ液の濃いものは再利用し、薄いものは中和処理する。また、金属は凝集沈殿やイオン交換樹脂等で処理することにより浄化している。