顧客のニーズに合った鉄鋼製品を生産するには、製・精錬や加工に関する技術ばかりでなく、多くの関連技術が必要である。なかでも重要なのは、分析技術、計測技術および制御技術である。鉄鋼製造に関連した分析技術の進歩としては、機器による元素分析の導入によって、リアルタイムで精度の良い分析が可能になったことが挙げられる。今後、鋼の高純度化が進むにつれて、ppmオーダーあるいはそれ以下の微量元素の分析技術が重要になってくる。

計測技術は、センサーを用いて温度、圧力、寸法などを測定するものであり、最近は、センサー信号のデータ処理までを含めてセンシングと呼ばれる。この分野では、信号のデジタル化が進んだ結果、ノイズの除去、演算、伝送、記憶などが容易に行えるようになっている。今後は、複数のセンサー情報を組み合わせて、ひとつのセンサーでは得られない高度な情報を得るセンサーフュージョンと呼ぶ技術の進歩が期待されている。

一定の品質の製品を、安定して大量に製造するには制御という手段は欠かせない。制御とは、適切な操作を加えて、望ましい状態になるように、現在の状態を変えていくことである。自動制御が行われている系は制御対象、制御システムとセンシングシステムとから成り、一般に図のような構成になっている。センシングによって測定、認識した値は、目標値と比較し、その差を制御システムによって必要な操作端の操作量に変換し、制御対象に加える。その結果を再びセンシングによって検出するというサイクルを繰り返す。制御対象プロセスを解析したうえで、最適の制御システム、センシングシステムを適用し、最も効率的な制御系を設計する学問体系を制御工学あるいは制御理論という。

鉄鋼製造プロセスでも、原料処理から最終製品の製造ラインに至るすべてのプロセスのほか、製鉄所で使用する電力、ガス、水などを集中管理するために制御理論を広範囲に活用している。