2次精錬は当初、高級鋼の製造に際し、転炉から出鋼した溶鋼を鋳造するまでの間に、水素などのガス成分を除去する目的で導入された。これは、真空脱ガスと呼ばれ、減圧した容器の中に溶鋼を入れることによって、平衡分圧を下げて、溶鋼中のガス成分を除去する方法である。その後、転炉の機能が脱炭のみに特化しつつあること、不純物元素や非金属介在物の低減が一層必要とされていること、目標温度や成分の許容範囲が狭くなってきたこと、などに対応して、2次精錬設備には温度調節機能、最終精錬機能や成分調整機能などが付加されるようになってきた。最近では、2次精錬は高純度鋼製造のための標準工程となっている。この2次精錬のうちでもとくに重要な機能は、最終の脱硫、酸素・窒素・水素などの脱ガス、介在物の除去、および極低炭素鋼における最終脱炭である。

脱硫は、溶銑予備処理のときと同様、CaO、Na2CO3、CaF2などを添加して行う。脱窒素・脱水素は、溶鋼を真空槽中で減圧処理することにより行う。脱酸素は、珪素やアルミニウムを溶鋼に加えて、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)系の非金属介在物とし、これを溶鋼の撹拌処理により、凝集肥大させ、スラグ中に吸収除去することにより行う。また、脱炭は、真空槽中で溶鋼に純酸素ガスを吹き付け、一酸化炭素として除去することにより行う。

一貫製鉄所で高純度鋼の大量生産に使われる2次精錬の代表的な設備として、RH(Ruhrstahl-Hausen)真空脱ガス装置、LF(Ladle Furnace)などがある。RHは、取鍋内溶鋼中に浸漬した2本の管(シュノーケル)のうちの1本(吸上管)にアルゴンガスを吹き込み、エアリフトポンプ作用で管内溶鋼を真空槽内に上昇させる。溶鋼は槽内で真空に曝されたのち、他の1本(排出管)を通って取鍋中に戻る。RHはこの環流速度が大きいため、大量の溶鋼の迅速脱ガス処理に適している。真空槽内に純酸素ガスを吹き込み、脱炭や昇温を行ったり、フラックスを添加して脱硫、脱酸を加速するなど、精錬機能も拡大している。一方LFは、強力な加熱機能を有し、多量の合金添加と精密温度調節が可能であり、還元性フラックスを用いた高温処理による脱硫ならびに脱酸生成物の除去にすぐれているので、合金鋼の2次精錬によく使われる。

主としてステンレス鋼の最終精錬に用いる2次精錬設備には、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉がある。ステンレス鋼は基本成分として多量のクロムを含有する。クロムは強力な酸化物形成元素であるため、ステンレス鋼においてはクロムの酸化損失を防止しながら、低炭素域まで脱炭することは通常の精錬では困難である。クロム共存下で炭素の優先脱炭を進行させるには、精錬雰囲気中の一酸化炭素分圧を下げることが有効である。これをアルゴンで稀釈して行うのがAOD炉であり、減圧により行うのがVOD炉である。