電気炉は、電気エネルギーにより加熱するため、原料としてスクラップ、冷銑やDRIなどの冷鉄源を100%使用できるのが特徴である。このため鉄資源の回収、リサイクルに電気炉は重要な役割を果たしている。スクラップと電力が豊富な地域では、高炉による一貫製鉄法に比べ、消費エネルギーが格段に少なく、かつ設備投資もはるかに少ない電炉法による製鋼比率が高くなる。電気炉は加熱方式によってアーク炉と誘導炉に分かれるが、鉄鋼製造プロセスとしては、炉容量が大きく、生産能率が高いアーク炉が主に使われている。

アーク炉では脱炭、脱燐、脱水素を目的とする酸化精錬と、脱硫、脱酸を目的とする還元精錬の両方が可能である。このため、アーク炉は、ステンレス鋼に代表される高級鋼の精錬にもよく利用する。しかし、ステンレス鋼の精錬に適したAOD法やVOD法などの2次精錬法の実用化にともなって、アーク炉の役割は、その上工程としての高能率溶解という機能に限定されるようになっている。普通鋼でも、高能率溶解と脱炭をアーク炉で行い、仕上げは2次精錬炉で行うプロセスが主流となっている。

アーク炉の加熱・溶解・脱炭の能率は、大電力変圧器やオキシフューエルバーナーの採用、炭材や純酸素ガスの吹き込みなどにより大幅に向上した。また、水冷パネルによる炉壁や天井の冷却保護機能も強化され、生産能率が1時間あたり80トンから120トンへと向上してきた。また、最近では、交流アーク炉から直流アーク炉への転換、スクラップの予熱と連続装入設備の導入、偏心炉底出鋼方式の採用が進んでいる。直流アーク炉は、電力ならびに電極や耐火物の所要原単位が小さく、騒音・フリッカーも少ない。スクラップの予熱・連続装入設備は、高温の排ガスを予熱に利用し、またスクラップ装入時の炉蓋開放による放熱を防ぐことができるため、エネルギー消費が減少する。偏心炉底出鋼方式は、炉体を傾けずに迅速に出鋼できるため能率が良く、かつ出鋼時にスラグが取鍋に流入しにくいので、溶鋼の清浄度維持のうえで好ましい。