普通鋼は大気中では通常さびる。大気中での普通鋼の腐食生成物は、FeOOH〔=1/2(Fe2O3・H2O)〕とFe3O4の微細粒子が混合、凝集したものである。これらの腐食生成物は水と酸素が共存することによって生じ、しかも水と酸素が供給され続ける限り、生成し続けるという特徴がある。したがって、さびの抑制、防止には、鋼材表面への水分、酸素の供給を遮断することが有効である。このために塗装や化成処理を行う。

大気中で使用される鉄鋼材料の耐食性に関する究極の目標性能は、鋼にNiやCrを過剰に添加することなく、無塗装のまま使用できることであり、このために開発されている鉄鋼材料が耐候性鋼である。図は、鋼の大気中での腐食による板厚減少量を示したものである。耐候性鋼の腐食量は普通鋼の約半分に減っているのがわかる。写真は、大気中で生じたさびの断面を普通鋼と耐候性鋼で比較したものである。地鉄側の黒や灰色に見える部分は、クロムや銅が濃縮した非晶質層であり、黄色い部分は結晶質のさび層である。耐候性鋼は、耐食性の高い非晶質層によって全面が覆われている。この非晶質層が安定錆となって、錆が酸素と水の通過を防止して、腐食の進行を抑制するといわれているが、安定錆の詳細な構造や生成機構については現在でも十分解明できていない。

耐候性鋼の無塗装使用は、内陸部の建築や橋梁の分野で広がりつつあり、今後の研究開発による特性のさらなる向上によって、適用分野が臨海地域へ広がることが期待されている。