現在実用化されている最も高強度の鉄鋼材料は、ここに示すスーパーファインメタルである。これは極細線であるが、図に示すように、汎用の普通鋼(SS400)の約10倍の強度を持っている。

この材料は炭素0.15%、珪素0.8%、マンガン1.5%を含み、燐、硫黄、酸素、窒素などの不純物元素を減らすために真空溶解される。熱間圧延によって線材にしたあと、熱処理してフェライト地にマルテンサイト相粒子が分散した組織をつくる。この組織の線材を、ダイスを通して冷間伸線することによって極細線にする。この冷間伸線工程では、直径3ミリメートルから30マイクロメートルまで、断面積減少率にして99.99%という大きな加工を加える。このような大きな加工ができるのは、硬いマルテンサイト相を微細にし、軟らかいフェライト相で取り囲んでいることによる。大きな加工によって、フェライトは加工硬化するとともに、加工方向に伸びたファイバー状組織となる。その間隔は50ナノメートルと超微細である。微細化の効果が利用されているために、超高強度でありながら高い延性を有しているのが特徴である。その良好な加工性は写真でも明らかである。