経済の発展にともない、生産拠点、消費拠点は世界的にますます広がっている。これにつれて、原料や製品を大量かつ高速で輸送する手段が求められている。輸送手段としての船舶は、大量の貨物を一度に運べるという利点がある反面、速度が飛行機はもとより、トラックにも及ばないという欠点がある。

将来の新しい海上輸送手段を実現するため、日本の主要造船会社が共同で開発を進めているプロジェクトに超高速貨物船“テクノスーパーライナー”がある。写真は荒波での試験用の、揚力タイプと空気圧力タイプの、2種類の実験船を示す。テクノスーパーライナーは、計画では貨物積載重量1,000トン、目標時速100キロメートルで、日本と東南アジア諸国間を1日ないし2日で結ぶ。

在来の船舶のほとんどは、排水部の浮力によって船体重量を支える排水量型船舶である。このタイプでは速力の増加につれて水の抵抗が増すため、推進に非常に大きな動力を必要とし、経済性の面から時速約45キロメートルが高速化の限界とされている。この水の抵抗を下げるために、テクノスーパーライナーでは、浮力以外に揚力や空気圧力も利用して船体を支える方式の開発が進められている。

現在この目標速度を超えて運航している船舶のひとつに水中翼船がある。現在の水中翼船は、比較的短距離の小型旅客船などの用途に限られ、大型化は今後の課題である。現在、水中翼船の水中翼には引張強さ1.1ギガパスカルのステンレス鋼を使用している。テクノスーパーライナーの開発テーマのひとつに、船体に使用するより高強度な材料の研究がとりあげられている。

テクノスーパーライナーは、日本の国家プロジェクトとして、1989年にその研究開発がスタートした。すでに基礎的技術は確立されており、総合実験を経て、2000年ごろの実用化をめざしている。