宇宙空間を利用して、通信、放送、気象観測用の人工衛星が実用化されている。そして移動体通信、船舶や自動車の位置認識、放送サービスの多様化、天気予報などの分野で人々の生活向上に大きく貢献している。これらはいずれも、人工衛星が高い位置にあって、地表の広い範囲をカバーできるという特徴を利用したものである。今後の宇宙空間の利用は、無重力空間を利用した材料の開発、製造など、宇宙環境そのものを利用する分野で、さらに大きな可能性を秘めている。

このほか、科学の分野でも、地球の磁気圏や電離層・成層圏の観測、太陽、銀河、彗星の観測を人工衛星を使って行うことにより、地球や宇宙に対する理解をさらに深める活動が進んでおり、この目的のための衛星を日本では科学衛星と呼んでいる。

写真は、科学衛星打ち上げのために現在用いられている日本製の3段式Mu(ミュー)-3S型ロケットである。このタイプのロケットは1980年から1991年の間に、太陽フレアや粒子線の観測用衛星「ひのとり」、ハレー彗星観測用衛星「すいせい」、銀河のX線源や多様なX線天体の観測用衛星「ぎんが」など、計10基の科学衛星を打ち上げるのに使われた。

このロケットは全長27.8メートル、総重量62トン、機体重量約3トンであり、第2段および第3段の機体には、引張強さ2.1ギガパスカル級の超高張力鋼板を使用している。今後のロケット開発の方向として、経済性を考慮して機体をさらに軽量化する必要があり、機体材料の一層の高強度化が重要である。