鉄の橋は鉄鋼材料の主要な用途のひとつである。世界最初の鉄の橋は、英国バーミンガム(Birmingham)近郊の、コークス高炉発祥の地として知られるコールブルックデール(Coalbrookdale)において、1779年に架けられたアーチ橋であり、アイアンブリッジ(Iron Bridge)と呼ばれている。

ここに見る最新の鉄の橋の写真は、1988年4月に完成した瀬戸大橋であり、3つの吊り橋、2つの斜長橋、4つの高架橋と1つのトラス橋から成り、本州と四国を結んでいる全長9,368メートルの橋である。瀬戸大橋には総量66万トンの鋼材を使用している。なかでも吊り橋を支える主ケーブルワイヤーには引張強さ1.6ギガパスカルという、普通鋼の4倍の強度を持つ高強度鋼線を使用している。

橋、ビルディングなどの構造物が巨大になるほど、それを構成する部材重量が増加する。たとえば、瀬戸大橋の中で最大の吊り橋である南備讃瀬戸大橋(全長1,723メートル、中央支間長1,100メートル)では、橋げたの総重量は4万3千トンに達する。このため、これを支える主ケーブルワイヤーは、強さ1.6ギガパスカルの高強度鋼線を用いても、直径5.1ミリメートルの素線34,417本を要し、これを束ねた直径は106センチメートル、ケーブルの総重量は2万5千トンに達する。最近建設された明石大橋の主ケーブルでは、さらに強度の高い1.8ギガパスカルのものを使用している。このような高強度鋼線の開発により、ケーブルの自重が低減でき、吊り橋が建設できるようになった、と言われている。

一定の荷重を支えるのに必要な部材の断面積は、使用される材料の強度が高いほど小さくてよいので、高強度材料の開発は、構造物の重量軽減にとって極めて重要である。